東京高等裁判所 昭和24年(新を)108号 判決 1949年8月30日
被告人
宮田靜行
主文
本件控訴はこれを棄却する。
理由
前略
弁護人の論旨第一点について。
論旨は要するに原裁判所の記録中に編綴されておる昭和二十四年二月二十五日附東父岡金之助作成名義の欺願及和解書と題する書面その他数通の書面が原審記録中に編綴され居り且つ記録によつては前掲書面を証拠書類として取扱つたか否か、その他これを記録に編綴した事由などが判らないから、かゝる書面の編綴された記録に基く原判決は畢竟違法であつて破棄を免かれないという趣旨である。しかし、訴訟記録は常に嚴格なる意味に於ける裁判所の訴訟手続その他の諸行爲並びに取調べた証拠書類からのみ成るものではなく、時として、これらより廣い意味の書類をも編綴されることあるは避けがたい所である。例へば前掲弁護人引用のような書面が審理終了後に只單なる参考用として被告人の利益のため提出せられたような場合には、裁判所としては、嚴格なる意味に於ては、これを記録の一部となすべきものでないこと勿論であるが他にかかる被告人に利益な書面迄も常にこれを却下し、又は返戻しなければならぬと解する理由もないから、廣い意味の記録(書類を含む)の一部としてこれを保存してもよいと解するのが妥当であるから所論は理由ないものである。又所論中右書面が審理中に訴訟関係人によつて適法に証拠物(書類)として提出せられたとする断定に基く部分は右書面が審理中に提出せられたことが原裁判所の記録に現われておらない所であるから論旨は採用できない。
以下省略